最終更新日: 2026年10月7日
【この記事でわかること】
- 2024年4月改正DV防止法で「精神的DV」も保護命令の対象になった経緯
- 保護命令の種類と「電話・SNS禁止命令」の具体的な対象行為
- 精神的DVで保護命令を取るために必要な証拠リスト
- 今夜DVにあった人が明日動くための申立て手順フロー
- モラハラと「法的なDV」の境界線
「毎日怒鳴られる。でも殴られてはいない。これって保護命令は取れないの?」「夫からLINEが一日100件来る。これは禁止命令の対象になる?」——2024年4月の改正後も、こうした疑問が続いています。
2024年4月1日に施行された改正DV防止法により、保護命令の対象が「身体的暴力」から「精神的な暴力(精神的DV)」にも拡大されました。また、電話・メール・SNSによる連続した接触も禁止命令の対象になりました。
この記事では、2024年改正の具体的な内容・精神的DVで保護命令を取るために何が必要か・実際に申立てるまでの手順を、精神的DVを経験した当事者の視点から解説します。
なお、本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別ケースへの法的アドバイスではありません。DVを受けている場合は一人で抱え込まず、まず相談窓口か弁護士にご連絡ください。
2024年4月改正DV防止法:何が変わったか

改正前と改正後の比較
2024年4月1日(令和6年4月1日)に施行された改正配偶者暴力防止法(DV防止法)では、保護命令の制度が大幅に拡充されました。
| 項目 | 改正前(〜2024年3月) | 改正後(2024年4月〜) |
|---|---|---|
| 保護命令の対象となる暴力 | 主に身体的暴力またはその脅迫 | 接近禁止命令等では、自由・名誉・財産への脅迫や、精神への重大な危害のおそれにも対象が拡大(所定の要件あり) |
| 接近禁止期間 | 6か月 | 1年(6か月→1年に延長) |
| 電話等禁止命令の対象 | 電話・FAX・メール | SNS・位置情報取得も対象に追加 |
| 子への電話等禁止命令 | なし | 新設(子への連絡も禁止できる) |
| 違反時の罰則 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 | 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(2025年6月1日以降の現行表記。2024年改正時は「懲役」) |
改正のポイントは大きく5つです。特に「精神的暴力も対象」になったことは、身体的な傷が残らないモラハラ・精神的DV被害者にとって大きな変化です。
「精神的暴力」とは何か:改正法での定義
DVや虐待で危険があるときは、まず自分と子どもの安全を確保し、緊急時は警察110へ。証拠集めや弁護士への相談を待って避難を遅らせる必要はありません。相談先はDV相談ナビ #8008(通話料がかかります。受付時間は接続先によって異なります)や配偶者暴力相談支援センターです。精神的な暴力もDVに含まれますが、すべてがそのまま保護命令の対象になるわけではありません。接近禁止命令等では、身体への暴力、または生命・身体・自由・名誉・財産に害を加える旨の脅迫を受け、さらに同様の暴力・脅迫によって生命または心身に重大な危害を受けるおそれが大きいことが必要です。
以下はDVに当たり得る行為の例です。保護命令の発令は、命令の種類に応じた要件から個別に判断されます。
- 継続的な罵倒・侮辱(「死ね」「役立たず」「お前には価値がない」等)
- 脅迫・威圧的な言動(「殺す」「子どもを連れ去る」等)
- 経済的支配(生活費を渡さない・財布を管理する)
- 外出・交友関係の制限
- 精神的に追い詰める行動パターン
「精神的苦痛を感じた」「怖い」という事情だけで発令が決まるわけではありません。身体への暴力・所定の脅迫の内容と、さらに重大な危害を受けるおそれが大きいかを確認します。安全を確保した後で、配偶者暴力相談支援センターや弁護士に相談してください。
保護命令の種類:あなたに必要なのはどれか
接近禁止命令
相手があなたの身辺につきまとうことや、住居・職場周辺を徘徊することを禁じる命令です。改正後は命令の有効期間が6か月から1年に延長されました。
退去命令
同居している住居から相手に退去することなどを命じます。期間は原則2か月ですが、被害者だけが住居の所有者または賃借人で、申立てがある場合は6か月です。退去等命令は、身体への暴力または生命・身体への脅迫を受け、さらに身体への暴力によって生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きいことが必要で、接近禁止命令等とは要件が異なります。
電話等禁止命令(2024年改正で対象拡大)
以下の行為を禁止する命令です。2024年改正でSNS・位置情報取得が新たに追加されました。
- 連続した電話・FAX
- 連続したメール・SMS
- 連続したSNSメッセージ(LINE・Instagram等)(2024年改正で追加)
- 位置情報の取得・ストーキングアプリの使用(2024年改正で追加)
子への電話等禁止命令(2024年改正で新設)
申立人の子に対して、電話・SNS等で連絡することを禁じる命令です。2024年改正で新設されました。相手が子どもを通じて申立人へ接触しようとするケースへの対応です。
精神的DVで保護命令を取るために必要な証拠

安全を先に、申立てに必要な資料を相談する
接近禁止命令等では、上記の身体への暴力・所定の脅迫と、さらに生命または心身に重大な危害を受けるおそれが大きいことを示す資料が必要です。証拠集めのために危険を冒さず、手元に資料がなくても、まず安全を確保して支援機関に相談してください。
【証拠リスト】精神的DVで有効とされる証拠
安全を確保してから、無理なく整理できるもの
- 録音・録画(暴言・脅し・威圧的言動)
- LINEや SMS のスクリーンショット(脅し・侮辱の文字)
- 日記・メモ(日付・時間・発言内容・状況を詳細に)
【重要】専門機関からの書類
- 医師の診断書(うつ病・適応障害・PTSD等)
- カウンセリング・精神科の受診記録
- 配偶者暴力相談支援センターへの相談記録
- 警察への相談記録・被害届
※ 証拠が不十分でも、まず相談窓口や弁護士に相談することで証拠収集の方針が見えてきます。
執筆者・古田のひとこと
私が弁護士に「証拠はあるのか」と問われたとき、手元には何もなかった。6年間の苦しみを証明する「形」がない焦りは今でも覚えています。その後、日記を書き始め、録音を重ね、カウンセリングを受けた記録を残すことで、少しずつ証拠を積み上げました。
電話・SNS禁止命令の対象:どこから「禁止」になるか
「連続した」が重要なキーワード
電話等禁止命令の対象は「連続した」連絡です。1回の電話や1件のメッセージが禁止対象になるわけではありません。「連続した」とはどの程度かについては、法律上の明確な基準がなく、個別の事情(頻度・内容・文脈)で判断されるとされています。
LINEの場合:既読スルーからの連投は対象になるか
| LINEの行為 | 禁止命令の対象になる可能性 |
|---|---|
| 未読スルーに対して一日に数十件以上のメッセージを送り続ける | 対象になる可能性あり |
| 返信がないことに対して威圧的・脅迫的な文面で連続送信する | 対象になる可能性あり |
| 1日に1〜2件の連絡(内容が普通の用件) | 対象になりにくい |
| 子どもについての連絡(共同親権下での必要な連絡) | 状況によって異なる・弁護士に確認を |
DVや虐待で危険があるときは、まず自分と子どもの安全を確保し、緊急時は警察110へ。証拠を集めるために避難を遅らせる必要はありません。手元に証拠がなくても、配偶者暴力相談支援センターや警察などに相談できます。電話等禁止命令の対象になるかは、個別の事情によって判断されます。LINEのスクリーンショットなど残っている記録は、安全を確保してから無理のない範囲で整理してください。相手に近づいて新たな記録を取ったり、子どもに撮影・録音をさせたりしないでください。共有端末や相手が使えるアカウントへの保存を避け、保管方法は支援機関と相談してください。
今夜DVにあった人が明日取るべき行動:申立て手順フロー
「今すぐ動きたいけど、どこに行けばいいかわからない」という方のために、保護命令申立てまでの具体的な手順を整理します。
【フロー図】DV被害者が保護命令を申立てるまでの手順
※ 緊急の場合(今夜危険がある)は警察への通報または110番が最優先です。
相談窓口の連絡先
- 今危険があるときは、まず身の安全を確保し、緊急時は警察110へ。DV相談ナビ(#8008)は最寄りの配偶者暴力相談支援センターにつながります。通話料がかかり、受付時間は接続先によって異なります。
- 配偶者暴力相談支援センター(各都道府県):相談・一時保護・弁護士紹介等
- 身の危険があるときは、まず安全を確保し、緊急時は警察110へ。
みんなの人権110番(0570-003-110):DV・セクハラなど女性の人権相談は、自動音声案内で1番を選択。受付は平日8:30〜17:15。通話料がかかり、一部のIP電話等からは利用できません。 - 法テラス(0570-078374):弁護士費用の立替制度・法律相談
- 警察(110番):緊急時・身の危険がある場合
モラハラとDVの境界線:保護命令を取れるかどうか
「モラハラ」は法的用語ではない
「モラハラ」は日常的に使われる言葉です。その言動がDVに当たるかと、保護命令の要件を満たすかは別に確認します。接近禁止命令等には、身体への暴力または所定の脅迫と、さらに生命または心身に重大な危害を受けるおそれが大きいことが必要です。精神的な苦痛の立証だけで発令が決まるわけではありません。
「精神的DVとして認められるモラハラ」の目安
| 言動・行為 | 精神的DVとして認められやすいか |
|---|---|
| 「死ね」「消えろ」など生命を脅かす言葉の繰り返し | 認められやすい(脅迫に近い) |
| 「役立たず」「頭おかしい」など人格否定の言葉を継続的に | 認められやすい(継続性があれば) |
| 外出・友人関係の完全な制限 | 状況による・証拠があれば有力 |
| 無視・シカト(数日間一切口を聞かない) | 単独では認められにくい・組み合わせで判断 |
| 「性格が合わない」「価値観が違う」という一般的なすれ違い | 認められにくい |
DVや虐待で危険があるときは、まず自分と子どもの安全を確保し、緊急時は警察110へ。証拠を集めるために避難を遅らせる必要はありません。手元に証拠がなくても、配偶者暴力相談支援センターや警察などに相談できます。「自分のケースはモラハラかDVかわからない」という場合も相談できます。保護命令の要件や必要な資料を支援機関・弁護士と確認し、資料の整理は安全確保後に無理のない範囲で進めてください。
→ モラハラ離婚の証拠収集と手順はこちら:モラハラ離婚|証拠の集め方・離婚手順・慰謝料相場
よくある質問(FAQ)
Q1. 「精神的DV」で保護命令を取れると聞きましたが、具体的にどんな状態なら取れますか?
A. 接近禁止命令等では、身体への暴力、または生命・身体・自由・名誉・財産に害を加える旨の脅迫を受け、さらに同様の暴力・脅迫によって生命または心身に重大な危害を受けるおそれが大きいことが必要です。継続的な苦痛や恐怖だけで決まるものではありません。DVや虐待で危険があるときは、まず自分と子どもの安全を確保し、緊急時は警察110へ。証拠集めや弁護士への相談を待って避難を遅らせる必要はありません。相談先はDV相談ナビ #8008(通話料がかかります。受付時間は接続先によって異なります)や配偶者暴力相談支援センターです。安全を確保してから、支援機関や弁護士と資料を整理してください。
Q2. 夫から毎日LINEが30件来ます。電話等禁止命令の対象になりますか?
A. DVや虐待で危険があるときは、まず自分と子どもの安全を確保し、緊急時は警察110へ。証拠を集めるために避難を遅らせる必要はありません。手元に証拠がなくても、配偶者暴力相談支援センターや警察などに相談できます。電話等禁止命令に当たるかは、内容・頻度・文脈など個別の事情で判断されます。LINEのスクリーンショットなどは、安全確保後に、残っているものから無理のない範囲で整理してください。共有端末や相手が使えるアカウントへの保存を避け、保管方法は支援機関と相談できます。
Q3. 保護命令を申し立てたら、相手に知られますか?
A. 申立て後、裁判所から相手に審尋(意見を聞く手続き)が行われる場合がありますが、申立人の所在地等は保護されます。相手に住所を知られることなく手続きを進められる配慮がされています。詳細は弁護士または配偶者暴力相談支援センターに確認してください。
Q4. 保護命令が発令された後、相手が違反した場合はどうなりますか?
A. 現在、保護命令に違反した場合の罰則は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金です。2024年改正時の「懲役」は、2025年6月1日から「拘禁刑」の表記になっています。違反が発生した場合は警察に通報し、緊急時は110へ連絡してください。
Q5. 子どもがいます。相手が子どもを通じて接触してくる場合の対応は?
A. 2024年改正で「子への電話等禁止命令」が新設されました。相手が子どもへの連絡を通じて申立人への接触を試みるケースに対応できます。申立て時に弁護士と相談して、子への禁止命令も合わせて申立てることを検討してください。
Q6. 保護命令は何か月有効ですか?期限後はどうなりますか?
A. 接近禁止命令は2024年改正で1年間(改正前は6か月)に延長されました。退去等命令は原則2か月ですが、被害者だけが住居の所有者または賃借人で、申立てがある場合は6か月です。期限が切れた後に被害が継続する場合は、再度申立てを行うことができます。期限切れ前に状況を弁護士に相談することをお勧めします。
まとめ:2024年改正DV防止法で変わった3つのポイント
2024年4月の改正DV防止法で最も重要な変化は、「精神的DVも保護命令の対象になった」ことです。身体的な傷がなくても、継続的な精神的暴力・脅迫・威圧的言動で苦しんでいる方が保護を求めやすくなりました。
- 精神的暴力も保護命令の対象に(身体的DVがなくても申立てできるようになった)
- 電話・SNS禁止命令の対象がLINE等に拡大(2024年改正で追加)
- 接近禁止期間が1年に延長・罰則が強化(改正前の2倍)
DVや虐待で危険があるときは、まず自分と子どもの安全を確保し、緊急時は警察110へ。証拠を集めるために避難を遅らせる必要はありません。手元に証拠がなくても、配偶者暴力相談支援センターや警察などに相談できます。日記・録音・診断書など、手元に残っている資料は安全確保後に無理のない範囲で整理できます。新しい記録を取るために危険を冒さず、整理や保管の方法は支援機関や弁護士と相談してください。
→ 2024年DV防止法改正の位置づけ(法改正全体):2026年4月 離婚法改正まとめ|共同親権・養育費・財産分与・保護命令の変更点
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→ DVがある場合の親権問題:共同親権とDV:単独親権を守るための証拠と手続き
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