公開日: 2026年10月25日
離婚後、家についての財産分与が話し合われても、相手が住み続けている。あるいは、自分が暮らしている家を相手に渡す話になり、その先が不安になっている。家をどちらの財産として扱うかと、実際に明け渡すかは、生活に直結する問題です。
2020年8月6日の最高裁決定は、財産分与の審判で、その家を住んでいる側に分与しないと判断した場合、明渡しまで命じることができるかを扱いました。
最高裁は、本件のような条件の下で、財産分与の判断に沿う権利関係の実現に必要と認めるときは、家庭裁判所が明渡しを命じることができる、と判断しました。名義を見ただけで結論が出る、という話ではありません。
暴力や脅しがあり、退去の話や相手との接触によって危険が高まる場合は、住まいの交渉より安全を優先してください。緊急時の安全確保と相談先を確認できます。
「住んでいる側に分与しない」と「分与の対象外」は違う
この事件の建物は、婚姻中に夫婦の協力で得た財産でした。一方の名義になっており、もう一方が占有、つまり、その建物を使っている状態にありました。
原審は、その建物を占有している側に分与しないと判断しました。しかし、明渡しを命じることはしませんでした。名義人が所有権に基づいて明渡しを求めるなら、別の民事訴訟で判断するべきであり、家庭裁判所の家事審判では命じられないと考えたためです。
ここでいう「分与しない」は、占有している相手にその建物を分与しない、という意味です。夫婦の協力で形成された財産ではない、と判断された事件ではありません。この違いを落とすと、判例が扱った場面が変わってしまいます。
財産分与の判断を、実際に実現するための命令
最高裁は、当時の家事事件手続法154条2項4号の意味を検討しました。
財産分与の審判が、分与するかどうか、額や方法を決めるだけで終わると、その判断を実現するために、当事者が改めて給付を求める訴訟などをしなければならないことがあります。同号は、そうした遠回りを避け、財産分与の審判を実効的にするための規定だと説明しました。
最高裁は、相手に財産を分与する場合だけでなく、分与しないと判断した場合でも、その判断に沿う権利関係を実現するために必要な給付を命じられる、と考えたのです。
本件の不動産について示した条件を整理すると、次のようになります。
- 婚姻中に、夫婦の協力で得た不動産である。
- 一方の名義で、他方が占有している。
- 財産分与の審判で、占有する他方には分与しないと判断した。
- その判断に沿った権利関係の実現に、明渡しが必要と認められる。
こうした場面では、家事事件手続法154条2項4号に基づき、占有している側に対して、名義人へ明け渡すよう命じることができるとしました。特に最後の「必要と認められる」という条件を省き、「名義人なら家を取り戻せる」と一般化しないことが大切です。
最高裁が、その場で明渡しを確定させたわけではない
最高裁は、原審の考え方には法令違反があるとして原決定を破棄し、さらに審理するため東京高等裁判所へ差し戻しました。
そのため、この決定を「最高裁で明渡しが確定した事例」と紹介することはできません。差戻し後の結論や、実際に明渡しが行われたかは、この裁判書からは分かりません。
また、もともと一方だけが持っていた財産や、相続した家、住宅ローンの扱いなどが、この事件と同じ条件になるとは限りません。この決定だけで、あなたの家の分け方や退去の義務を決めることもできません。
現在の給付命令と、財産分与の制度を分けて確認する
2026年10月21日に確認した家事事件手続法154条2項には、財産分与の審判などで、当事者に金銭の支払い、物の引渡し、登記義務の履行などの給付を命じることができる規定があります。家事事件手続法154条2項4号
一方、財産分与の有無・額・方法に関する民法768条は、2020年の決定当時と現在で同じ文言ではありません。現在は、婚姻中に取得・維持した財産や、それぞれの寄与の程度など、考慮する事情が条文に記されています。請求期間については、離婚の時期による経過措置があります。民法768条・令和6年法律33号附則4条
離婚後に家庭裁判所へ申し立てる期間も、離婚した時期によって異なります。裁判所の現在の案内では、2026年4月1日以降の離婚は、離婚した日の翌日から起算して5年を経過すると申立てができなくなり、それより前の離婚は2年です。具体的な申立先や資料とともに、財産分与請求調停の案内で確認してください。
2020年の決定が、改正後の請求期間や、現在の個別の家の扱いまで答えたわけではありません。
家の資料と、暮らしの予定を一緒に相談する
編集部としては、「誰の名義か」だけで話を進めず、何を求め、何が判断されているのかを先に整理することを勧めます。
手元にある登記事項証明書、財産一覧、財産分与の申立てに関する書面、審判書や判決などを確認してください。裁判書があるなら、家を誰に分与するかという記載と、明渡しなどの給付を命じる記載が、それぞれどこにあるかを相談時に確認できます。相手の私的な情報を新たに探すことから始める必要はありません。
住んでいる人にとっては、次の住まいや仕事、通院、子どもの暮らしなども切り離せません。これらの事情で法律上の結論がどう変わるかを自分で決めるのではなく、生活上困る点として相談先へ伝えてください。暮らしを立て直すための案内でも、住まい・仕事・生活費を整理できます。
明渡しを命じる裁判と、実際に占有を移す執行の手続も分けて確認してください。裁判所「明渡しの強制執行」では、債務名義に基づいて占有を移す手続を案内しています。
この決定を根拠に、裁判所の手続を経ず自分で退去させたり、鍵を交換して相手の出入りを妨げたりすることを、編集部は勧めません。実際の明渡しの方法や時期は、書類と現在の状況を踏まえて専門家に確認してください。
財産分与全体の整理はお金・財産の案内へ。相談費用が心配なときは、法テラスの無料法律相談・弁護士等費用の立替の案内で利用条件や相談先を確認できます。
判例の出典
判例紹介・制度案内の確認日:2026年10月21日。この記事は判例と公的な案内の紹介であり、個別の法律相談や弁護士による監修を示すものではありません。
まずは無料相談から
一人で悩まず、離婚問題に詳しい弁護士に相談してみましょう。
初回無料相談を受け付けている事務所もあります。
費用が心配な方は法テラス(日本司法支援センター)の無料相談もご活用ください。
免責事項・ご利用にあたって
本記事は、離婚に関する一般的な情報の提供を目的としており、 個別の法律相談・法的アドバイスを行うものではありません。
記事の内容は、執筆時点の法律・判例・実務に基づいており、 法改正・判例変更等によって内容が変わる場合があります。 最新の情報については、必ず弁護士等の専門家にご確認ください。
本記事の内容を参考にした結果生じたいかなる損害・不利益についても、 当サイト運営者は責任を負いかねます。 重要な法的判断は、必ず資格を持つ弁護士にご相談ください。
【法改正対応について】
本記事は2026年5月現在の法律に基づいています。
共同親権制度(2026年4月施行)等の重要改正については、
最新の法律情報をご確認ください。