離婚時の年金分割、申請と審判は別の手続? 2016年地裁判決を読む

公開日: 2026年10月25日

年金分割の割合について、家庭裁判所で審判が出た。これで手続は終わったと思っていたら、年金事務所への請求がまだ必要だと言われた。あるいは、書類を持ち帰った後、自分の申請がどう扱われているのか分からない。そんな食い違いを考える手掛かりになる判決があります。

2016年5月17日の東京地裁判決です。家庭裁判所で割合を定めることと、年金の記録を改定してもらう請求とを分け、最初の請求を取り下げたか、その後の請求への却下処分に取消事由があるか、損害賠償責任があるかを判断しました。

この判決は、年金分割を受けられる額や、現在のあなたの請求期限を決めるものではありません。特に、判決が記す当時の「2年」「1か月」を、現在の手続へそのまま使わないでください。現在の期限は後半で別に確認します。

家庭裁判所の審判と、年金の記録を変える請求

この事件では、家庭裁判所が「請求すべき按分割合」を定める審判をしました。その後、本人が年金事務所で「標準報酬改定請求」を行っています。ここでいう標準報酬の改定は、年金分割に関わる年金記録を改定するための請求です。

裁判所は、当時の厚生年金保険法の「家庭裁判所が請求すべき按分割合を定めたとき」について、割合を定める審判がされ、かつ、その審判が確定していることを意味すると解釈しました。審判書を受け取ったということと、審判が確定しているということは、同じではありません。

その上で、裁判所は、当時の規定における審判の確定を、単に添付書類の見た目から判断する形式上の要件ではなく、実質的な要件と考えました。「確定はしているが、それを証明する書類がまだない」場合と、「まだ審判が確定していない」場合を、分けて扱っています。

この説明を、「今の手続では確定証明書がいらない」と読むことはできません。判決が判断した当時の条文と、現在の必要書類は別に確かめる必要があります。

最初の請求は、取り下げられたと判断された

事件では、審判がまだ確定していない時点で最初の改定請求がされました。年金事務所の職員による説明の後、本人は申請書類全部の返還を受け、持ち帰っています。その後、審判が確定し、確定証明書などを添えて、もう一度改定請求をしましたが、当時の期限を過ぎたことを理由に却下されました。

本人は、最初の請求は取り下げておらず、後の請求は不足書類を補った継続中の手続だと主張しました。これに対し裁判所は、職員の説明、書類全部の持帰り、その後の対応などを踏まえ、最初の請求は取り下げられたと認めました。

書類を一度持ち帰れば、あらゆる申請が必ず取下げになるという判断ではありません。この事件の説明ややり取り、記録を踏まえた認定です。逆に、同じ申請書をもう一度出せば、前の請求が続いていると必ず認められるわけでもありません。

裁判所は、後の改定請求を、最初の請求とは別の新たな請求として扱いました。「申請したつもり」と「申請が現在も維持されていること」の間に、食い違いが生じていたのです。

三つの求めに対する、三つの判断

本人は訴訟で、最初の請求に基づいて記録を改定するよう求める義務付け、後の却下処分の取消し、受けられなかった年金に関する国家賠償を求めました。判決の結論は次のように分かれます。

求めたこと 地裁の判断
最初の請求に基づく標準報酬改定の義務付け 取下げによって前提となる申請がなく、不作為の違法確認の訴えも欠くとして、訴えを却下。
後の請求を却下した処分の取消し 主張された教示義務違反や公平原則違反などの取消事由を認めず、請求を棄却。
国家賠償 職員の職務上の義務違反も、主張された損害との因果関係も認めず、損害額を判断するまでもなく請求を棄却。

訴訟費用は原告の負担とされました。損害賠償を請求した額が、そのまま裁判所に認められたわけではありません。また、この判決の後の上訴や確定状態は、この記事では確認していません。

地裁は、当時、まだ審判が確定していなかったという事情も踏まえ、取下げと確定後の期限内の再請求を促した行政指導自体を、特段不合理で違法な取扱いとはしませんでした。期限の説明なども、当該事件の記録を踏まえて検討しています。行政側には常に説明の義務がない、あるいは、逆に、不備があれば必ず補ってもらえるという一般論にはできません。

現在の期限は、離婚等の時期と特例を確認する

2026年10月21日に確認した日本年金機構の案内では、年金分割の請求期限は、原則として離婚成立などの日の翌日から起算して5年です。2026年4月1日前に離婚等をした場合は2年とされています。日本年金機構「年金分割の請求手続きを検討していますが、請求期限はありますか」

同じ案内には、期限前に所定の審判や調停を申し立て、期限後又は期限前6か月以内に審判が確定・調停が成立した場合などについて、その日の翌日から起算して6か月を経過するまで請求できる特例もあります。按分割合を定める離婚訴訟の附帯処分などについての区分も示されています。

誰にでも、原則の期限へ自動的に6か月を足せる、という意味ではありません。申立ての時期、審判の確定や調停成立などの時点と、該当する区分を確認する必要があります。当時の判決の特例「1か月」を、現在の案内の「6か月」に置き換えて、この事件なら救済されたと結論付けることもできません。

今の一般的な請求の条件は厚生年金保険法78条の2にも定められています。現在の日本年金機構の合意分割の案内は、審判や判決の場合、その謄本又は抄本に加えて、確定証明書を求めています。古い判決の添付書類の説明を理由に、今の準備を省かないでください。

期限の特例や提出資料は、手続の状況によっても異なります。現在の自分の期限や必要な書類は、古い判例の経過から計算せず、日本年金機構の窓口で書類を示して確認してください。

「審判が出た日」「確定した日」「証明書の日」を分けておく

編集部からは、家裁の書類と年金事務所の書類を、一つの束にしたままにしないことを勧めます。割合を決める手続と、年金記録を改定する請求のどちらが、今どの段階にあるかを見たいからです。

審判書、確定証明書、申立ての時期を示す書類、年金事務所へ出した請求書の控えや通知を、手元にある範囲で並べてみてください。審判が出た日、確定した日、証明書が作られた日は、同じ日付として扱わず、書類どおりに残します。

書類を返されたり、追加提出を求められたりしたときは、「今の請求は続いているのか」「取下げとして扱われているのか」「次に必要なことと期限は何か」を窓口に確認し、説明を受けた日と内容を控えておくことを提案します。自分で取下げや再請求を選ぶよう勧める記事ではありません。迷った点を、その場で曖昧なままにしないための確認です。

却下処分などへの対応を相談したい場合は、その通知も持参してください。年金分割そのものの請求期限と、不服を述べる手続の期限を混同しないよう、早めに確認することを勧めます。

暮らし全体の整理はお金・財産の案内へ。法律相談の利用条件や窓口は法テラスの案内で確認できます。

判例の出典

  • 2016年5月17日・東京地方裁判所判決:裁判所の判例詳細/公式裁判書PDF。主文・請求は1頁、当時の期限は3頁、申請の経過は5〜7頁、裁判所の判断は15〜22頁。判決本文が記す当時の法令を前提とする紹介です。

判例紹介・制度案内の確認日:2026年10月21日。年金額・割合や個別の期限を判断する記事ではありません。

この記事を書いた人

福田

54歳・女性・東京都在住。19年間の婚姻生活のあと41歳で調停離婚を経験。「弁護士費用がもったいない」と自分で調停に臨んだが、財産分与で1000万円近く損をした。この後悔がサイトを立ち上げたきっかけ。法律の専門家ではないが、法務省や裁判所の公開情報をもとに、正確な情報を届けることを続けている。

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