公開日: 2026年10月25日
相手が申し立てた財産分与が、家庭裁判所で却下された。自分が申し立てた事件ではないから、結果に不服があっても何もできないのでしょうか。
2021年10月28日の最高裁決定は、財産分与の申立てを却下する審判に対し、元配偶者である申立ての相手方も、即時抗告をすることができると判断しました。即時抗告とは、その審判に不服を申し立て、上級の裁判所の判断を求める手続です。
ただし、抗告できる立場があることと、財産を分けてもらえることは別です。この事件には申立人の異なる二つの申立てがあり、最高裁での扱いも分かれました。そこをたどると、この決定が答えた問いが見えてきます。
二つの申立てで、立場が入れ替わっていた
元夫婦は、それぞれ財産分与を求めていました。最高裁の決定文では、一方の申立てを「第1事件」、もう一方の申立てを「第2事件」と呼んでいます。
最高裁に抗告した人は、第1事件では申し立てられた側、第2事件では自分が申し立てた側でした。同じ元夫婦の財産分与でも、一つの申立てについて二通りの結論が出た、という話ではありません。
第1事件は、先に申し立てられた調停が不成立になり、調停を申し立てた時に審判の申立てがあったものと扱われた事件です。その後、もう一方が別に第2事件を申し立てました。家庭裁判所は、両方の申立てを却下しました。
「却下なら有利だから、抗告できない」と原審は考えた
原審は、第1事件について、申立てが却下されたことは、その相手方が受けられる最も有利な内容だと考えました。だから相手方には「抗告の利益」がなく、即時抗告はできないとしたのです。
抗告の利益とは、不服申立てによって審判の変更を求める法律上の利益をいいます。相手の請求が通らなかったのなら、それでよいのではないか。原審は、そのような考え方で、抗告の入り口を閉じました。
最高裁は、この判断を是認しませんでした。
当時の家事事件手続法156条5号は、財産分与の審判と、その申立てを却下する審判について、元夫又は元妻が即時抗告できると定めていました。最高裁は、これは審判の具体的な内容などにかかわらず、元配偶者の双方に抗告の利益を認め、即時抗告権を与えた規定だと解釈しました。
つまり、第1事件で自分が申立人でなくても、元配偶者である相手方として、却下の審判に即時抗告できるという判断です。「申し立てられた側だから」という理由だけで、不服を述べる立場を否定したわけではありません。
抗告を認めた部分と、認めなかった部分
最高裁は、第1事件に関する原決定の部分を破棄し、さらに審理するため広島高等裁判所へ差し戻しました。ここで財産分与の額や方法まで決めたわけではありません。差戻し後の結論や、実際に財産の受渡しが行われたかは、この決定文からは分かりません。
一方、自分が別に申し立てた第2事件については、結論が違いました。最高裁は、当時の民法768条2項ただし書に定める期間が過ぎていたことを理由に、申立てを却下すべきだとした判断を是認しています。その余の抗告は棄却され、その部分の抗告費用は抗告人の負担とされました。
第1事件の相手方として抗告できるからといって、第2事件の独立した申立てまで期限内になったわけではありません。どの申立ての、どの立場について判断したのかを分けることが、この事件を読む一番の手掛かりです。
今も、抗告の期間と財産分与を求める期間は別
2026年10月21日に確認した家事事件手続法156条1項5号にも、財産分与の審判と申立てを却下する審判について、元夫又は元妻が即時抗告できる規定があります。条文全体が当時と同じという意味ではなく、この対象部分を確認したものです。家事事件手続法156条
同法86条では、審判に対する即時抗告は、特別の定めがある場合を除き、2週間の不変期間内に行うとされています。いつから期間が進むかは、告知を受ける者かどうかなどによって定められています。この記事で、あなたの事件の最終日を計算することはできません。届いた審判書や告知に関する書類を、そのまま相談先へ持っていってください。家事事件手続法86条
これとは別に、離婚後、家庭裁判所へ財産分与を求める期間があります。裁判所の現在の案内では、2026年4月1日以降に離婚した場合、離婚した日の翌日から起算して5年を経過すると申立てができなくなり、それより前に離婚した場合は2年です。この経過措置は、改正法附則4条の期間制限の特則によります。裁判所「財産分与請求調停」/民法768条・改正附則4条
「離婚後5年だから、届いた審判への不服申立てもしばらく待てる」とは考えないでください。最初に財産分与を求める期間と、すでに出た裁判に不服を述べる期間は、別の時計で動いています。この2021年決定も、現在の請求期間を延ばす方法を示したものではありません。
相談前は、財産の一覧より先に事件の一覧を
編集部からは、申立てや裁判が複数あるとき、まず事件ごとの紙を分けることを勧めます。財産の話に入る前に、「誰が申し立てたか」「自分はどちらの立場か」「何が却下されたか」を確かめたいからです。
手元の申立書、調停終了に関する書類、審判書、抗告についての決定を、事件ごとに並べてみてください。事件番号と、裁判所から書類を受け取ったことが分かる記録も一緒にすると、相談先が経緯を追いやすくなります。分からない日付は、推測で埋めず、分からないままで構いません。
相談したいことも、「不服を述べられる立場があるか」と「不服を述べて何を変えたいか」を分けて伝えてみてください。抗告できるという判例を見つけるだけでは、財産分与の見通しまで決まらないからです。
離婚前後のお金の整理はお金・財産の案内へ。相談費用が気になる場合は、法テラスの無料法律相談・弁護士等費用の立替の案内で利用条件や窓口を確認できます。
判例の出典
判例紹介・制度案内の確認日:2026年10月21日。個別の手続選択や期限は、手元の書類を基に専門家へ確認してください。
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