財産分与で一部の財産を後回しにできる? 離婚訴訟の2022年最高裁判決

公開日: 2026年10月25日

財産の一覧には載せたのに、判決を読んでも、その財産についてどう判断されたのか分からない。「分ける対象ではない」と決まったのか、それとも、判断が残っているのか。ここが曖昧だと、離婚後のお金の見通しも立てにくくなります。

2022年12月26日の最高裁判決は、離婚訴訟に附帯して財産分与が申し立てられた事件で、裁判所が一部の財産を判断しないままにできるかを扱いました。「附帯して」とは、離婚の請求と一緒に、財産分与の処分も求めることです。

最高裁は、離婚を認める判決をする際、当事者が婚姻中に双方の協力で得たものとして分与を求める財産の一部について、財産分与の裁判をしないことは許されない、と判断しました。

ただし、挙げた財産がすべて分与される、という判決ではありません。判断する範囲と、判断した結果は、分けて読む必要があります。

別の訴訟が続く財産について、原審は判断を留保した

この事件では、双方が離婚を求め、それぞれ財産分与も申し立てていました。第一審は、分与を求められた財産の全部について裁判をしました。

その後の原審は、ある財産について、夫婦が婚姻中に協力して得た財産に当たるとしながらも、別の訴訟が続いていることなどを理由に、現時点で分与の割合や額を定めるのは相当ではないと考えました。その財産を除き、残りについてだけ財産分与の裁判をしたのです。

最高裁が問題にしたのは、この「一部を判断しない」という扱いでした。財産を隠していた事件として紹介するものでも、特定の職業や事業の財産を分ける方法を説明するものでもありません。

最高裁は、同じ手続で解決する制度の意味を重視した

最高裁は、当時の民法768条3項と人事訴訟法32条1項を読み合わせ、離婚請求と一緒に財産分与が申し立てられた場合、双方の協力で得たものとして分与を求める財産の全部について裁判することが予定されている、と説明しました。

財産分与は、夫婦が婚姻中に持っていた実質的な共同財産を清算・分配することなどを目的とする制度です。また、離婚の訴訟で財産分与も扱う仕組みには、手続の負担や当事者の便宜を考え、同じ訴訟で審理して同時に解決できるようにする意味があるとしました。

最高裁は、こうした制度の趣旨からも、当事者が分与を求める財産の一部について裁判をしないことは沿わないと考えました。原判決のうち財産分与に関する部分を破棄し、その部分を東京高等裁判所へ差し戻しています。

この判決だけでは、差戻し後に各財産がどう評価され、誰にどれだけ分与されたかまでは分かりません。

「対象外と判断した」と「判断していない」を混ぜない

この判決を読むときに、編集部が特に分けたいのは、次の二つです。

財産について知りたいこと 確認するポイント
分与を求めた財産について、判断がされたか 判決のどの箇所で、その財産を取り上げているか
判断された結果、どう扱われたか 分与の対象性、評価、額・方法について、どのような理由が記載されているか

「判断しなければならない」という今回の結論を、「求めた財産はすべて自分にも分けられる」と読み替えることはできません。財産が分与の対象になるか、いくらと評価するか、どのように分けるかという具体的な結論を、この判決から予測することもできません。

また、この事件の中心は、離婚訴訟に附帯して申し立てられた財産分与です。夫婦が協議でどのような合意をできるか、離婚後に初めて財産分与を申し立てる場合を含むすべての手続について、同じ問いに答えた判決ではありません。

今の条文と、離婚後の申立期間は別に確認する

2026年10月21日に確認した人事訴訟法32条1項にも、申立てにより、離婚の請求を認める判決で財産分与等の附帯処分を裁判する規定があります。一方、民法768条3項の考慮事項は、判決当時の条文から更新されています。現在の条文には、婚姻中に取得・維持した財産や寄与の程度、婚姻期間、生活水準などが記されています。人事訴訟法32条/民法768条・771条

また、現在の人事訴訟法34条の3第2項には、財産分与の附帯処分の申立てがある場合、裁判所が必要と認めるときに、申立て又は職権で、当事者に財産の状況について情報開示を命じる規定があります。養育費の回収などに使う、民事執行法上の財産開示とは別の仕組みです。人事訴訟法34条の3

現在の制度を説明するときに、2022年の判決が引用した条文だけを、そのまま今の条文として載せることはできません。この判決が、新しい情報開示の制度まで定めたわけでもありません。また、請求期間については、離婚の時期による経過措置があります。

もう一つ、離婚後に家庭裁判所へ財産分与を申し立てる期間にも注意が必要です。裁判所の現在の案内では、2026年4月1日以降に離婚した場合は、離婚した日の翌日から起算して5年を経過すると申立てができなくなります。同日より前に離婚した場合は2年です。裁判所「財産分与請求調停」

これは、離婚後の申立てについての現在の案内です。今回の離婚訴訟の判断範囲の話と混ぜたり、この判決を根拠に以前の離婚についても申立期間が延びると考えたりしないでください。自分の事件がどの段階にあり、どの時点の制度で扱われるのかは、書類を持って確認する必要があります。

財産一覧に「求めたこと」と「判断されたこと」を並べる

編集部からの提案は、財産の一覧をただ増やすより、すでに手元にある書類の対応を整理することです。

安全に確認できる範囲で、財産の名称、分与を求めた内容、相手の主張、判決や審判で判断された箇所を並べてみてください。判断の記載を見つけられない財産と、理由を読んでも納得できない財産は、相談で確認したいことが違います。

相談には、財産一覧だけでなく、申立てや訴訟で提出した書面、判決・審判書も一緒に持っていくと、どこに食い違いがあるかを示しやすくなります。裁判所の財産分与の案内には、不動産の登記事項証明書、評価資料、預貯金の資料など、標準的な添付資料も示されています。ただし、あなたの事件で必要な資料は、手続に応じて確認してください。

不服申立てを考えている場合は、今回の記事にある「5年・2年」を、その提出期限だと思わないでください。財産分与を申し立てる期間と、届いた裁判に対して不服を述べる期限は別の話です。届いた書類の日付や期限も含めて、早めに専門家へ相談してください。

お金の整理全体はお金・財産の案内へ。相談費用が心配な場合は、法テラスの無料法律相談・弁護士等費用の立替の案内で利用条件や相談先を確認できます。

判例の出典

判例紹介・制度案内の確認日:2026年10月21日。この記事は判例と公的な案内の紹介であり、個別の法律相談や弁護士による監修を示すものではありません。

この記事を書いた人

福田

54歳・女性・東京都在住。19年間の婚姻生活のあと41歳で調停離婚を経験。「弁護士費用がもったいない」と自分で調停に臨んだが、財産分与で1000万円近く損をした。この後悔がサイトを立ち上げたきっかけ。法律の専門家ではないが、法務省や裁判所の公開情報をもとに、正確な情報を届けることを続けている。

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