【2024年改正】DV保護命令が強化|精神的DVも対象・電話SNS禁止命令・申立て手順を解説

公開日: 2026年5月31日

執筆者:古田(ふるた)|2022年協議離婚経験者。6年間の婚姻生活でモラハラ・精神的DVを受け続け、「証拠がない」と言われながらも弁護士と一緒に証拠を整理して離婚できた経験があります。同じ苦しみを持つ方に、具体的な方法を伝えたいと思っています。
最終更新:2026年5月30日

【この記事でわかること】

  • 2024年4月改正DV防止法で「精神的DV」も保護命令の対象になった経緯
  • 保護命令の種類と「電話・SNS禁止命令」の具体的な対象行為
  • 精神的DVで保護命令を取るために必要な証拠リスト
  • 今夜DVにあった人が明日動くための申立て手順フロー
  • モラハラと「法的なDV」の境界線

「毎日怒鳴られる。でも殴られてはいない。これって保護命令は取れないの?」「夫からLINEが一日100件来る。これは禁止命令の対象になる?」——2024年4月の改正後も、こうした疑問が続いています。

2024年4月1日に施行された改正DV防止法により、保護命令の対象が「身体的暴力」から「精神的な暴力(精神的DV)」にも拡大されました。また、電話・メール・SNSによる連続した接触も禁止命令の対象になりました。

この記事では、2024年改正の具体的な内容・精神的DVで保護命令を取るために何が必要か・実際に申立てるまでの手順を、精神的DVを経験した当事者の視点から解説します。

なお、本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別ケースへの法的アドバイスではありません。DVを受けている場合は一人で抱え込まず、まず相談窓口か弁護士にご連絡ください。

このページの目次

2024年4月改正DV防止法:何が変わったか

2024年改正DV防止法の概要

改正前と改正後の比較

2024年4月1日(令和6年4月1日)に施行された改正配偶者暴力防止法(DV防止法)では、保護命令の制度が大幅に拡充されました。

項目 改正前(〜2024年3月) 改正後(2024年4月〜)
保護命令の対象となる暴力 主に身体的暴力またはその脅迫 精神的暴力・精神的苦痛も対象に追加
接近禁止期間 6か月 1年(6か月→1年に延長)
電話等禁止命令の対象 電話・FAX・メール SNS・位置情報取得も対象に追加
子への電話等禁止命令 なし 新設(子への連絡も禁止できる)
違反時の罰則 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 2年以下の懲役または200万円以下の罰金

改正のポイントは大きく5つです。特に「精神的暴力も対象」になったことは、身体的な傷が残らないモラハラ・精神的DV被害者にとって大きな変化です。

「精神的暴力」とは何か:改正法での定義

改正後のDV防止法では、「精神的な暴力(生命、身体、自由、名誉または財産に対し害を加える旨を告知してする脅迫を含む)であって、その身体に対する暴力に準ずる心身に有害な影響を及ぼすもの」が保護命令の対象に加わりました。

具体的には以下のような行為が対象になり得るとされています。

  • 継続的な罵倒・侮辱(「死ね」「役立たず」「お前には価値がない」等)
  • 脅迫・威圧的な言動(「殺す」「子どもを連れ去る」等)
  • 経済的支配(生活費を渡さない・財布を管理する)
  • 外出・交友関係の制限
  • 精神的に追い詰める行動パターン

ただし「精神的苦痛を感じた」というだけでは保護命令は認められません。「継続する被害への恐怖」を立証する証拠が必要です。

保護命令の種類:あなたに必要なのはどれか

接近禁止命令

相手があなたの身辺につきまとうことや、住居・職場周辺を徘徊することを禁じる命令です。改正後は命令の有効期間が6か月から1年に延長されました。

退去命令

同居している場合に、相手に住居から退去するよう命じる命令です。有効期間は2か月です。

電話等禁止命令(2024年改正で対象拡大)

以下の行為を禁止する命令です。2024年改正でSNS・位置情報取得が新たに追加されました。

  • 連続した電話・FAX
  • 連続したメール・SMS
  • 連続したSNSメッセージ(LINE・Instagram等)(2024年改正で追加)
  • 位置情報の取得・ストーキングアプリの使用(2024年改正で追加)

子への電話等禁止命令(2024年改正で新設)

申立人の子に対して、電話・SNS等で連絡することを禁じる命令です。2024年改正で新設されました。相手が子どもを通じて申立人へ接触しようとするケースへの対応です。

精神的DVで保護命令を取るために必要な証拠

精神的DV被害の証拠収集

「証拠がなければ認められない」という現実

精神的DVは身体的な傷が残らないため、証明のハードルが身体的DVより高い傾向があります。保護命令を申し立てるには、①被害の事実と②継続する被害への恐怖、の両方を立証する証拠が必要とされています。

【証拠リスト】精神的DVで有効とされる証拠

【最重要】今すぐ集められるもの

  • 録音・録画(暴言・脅し・威圧的言動)
  • LINEや SMS のスクリーンショット(脅し・侮辱の文字)
  • 日記・メモ(日付・時間・発言内容・状況を詳細に)

【重要】専門機関からの書類

  • 医師の診断書(うつ病・適応障害・PTSD等)
  • カウンセリング・精神科の受診記録
  • 配偶者暴力相談支援センターへの相談記録
  • 警察への相談記録・被害届

※ 証拠が不十分でも、まず相談窓口や弁護士に相談することで証拠収集の方針が見えてきます。

執筆者・古田のひとこと

私が弁護士に「証拠はあるのか」と問われたとき、手元には何もなかった。6年間の苦しみを証明する「形」がない焦りは今でも覚えています。その後、日記を書き始め、録音を重ね、カウンセリングを受けた記録を残すことで、少しずつ証拠を積み上げました。「証拠がない」という状況は、今日から変えられます。日記は今日から書けます。録音は今日から始められます。まず一歩を踏み出してください。

電話・SNS禁止命令の対象:どこから「禁止」になるか

「連続した」が重要なキーワード

電話等禁止命令の対象は「連続した」連絡です。1回の電話や1件のメッセージが禁止対象になるわけではありません。「連続した」とはどの程度かについては、法律上の明確な基準がなく、個別の事情(頻度・内容・文脈)で判断されるとされています。

LINEの場合:既読スルーからの連投は対象になるか

LINEの行為 禁止命令の対象になる可能性
未読スルーに対して一日に数十件以上のメッセージを送り続ける 対象になる可能性あり
返信がないことに対して威圧的・脅迫的な文面で連続送信する 対象になる可能性あり
1日に1〜2件の連絡(内容が普通の用件) 対象になりにくい
子どもについての連絡(共同親権下での必要な連絡) 状況によって異なる・弁護士に確認を

「どの程度の連絡が禁止命令の対象になるか」は個別の事情によって判断が異なります。LINEのスクリーンショット(日時・内容が記録されたもの)を証拠として保管しておくことが重要です。

今夜DVにあった人が明日取るべき行動:申立て手順フロー

「今すぐ動きたいけど、どこに行けばいいかわからない」という方のために、保護命令申立てまでの具体的な手順を整理します。

【フロー図】DV被害者が保護命令を申立てるまでの手順

STEP 0:身の安全を確保する(緊急の場合は警察110番・DVシェルター)
STEP 1:配偶者暴力相談支援センターに相談(0120-279-889等)
※ 24時間・無料・相談内容は秘密に保たれます
STEP 2:弁護士に相談(法テラス・無料相談窓口を活用)
※ 収入が一定以下なら法テラスで費用立替可
STEP 3:証拠を収集・整理する(録音・日記・診断書)
STEP 4:地方裁判所に保護命令申立書を提出
※ 申立書は弁護士のサポートで作成するのが確実
保護命令の発令(迅速に審理・緊急の場合は即日発令も)

※ 緊急の場合(今夜危険がある)は警察への通報または110番が最優先です。

相談窓口の連絡先

  • DV相談ナビ(#8008):最寄りの相談窓口につながる(無料)
  • 配偶者暴力相談支援センター(各都道府県):相談・一時保護・弁護士紹介等
  • 女性の人権ホットライン(0570-070-810):DV・セクハラ等の相談
  • 法テラス(0570-078374):弁護士費用の立替制度・法律相談
  • 警察(110番):緊急時・身の危険がある場合

モラハラとDVの境界線:保護命令を取れるかどうか

「モラハラ」は法的用語ではない

「モラルハラスメント(モラハラ)」は日常的に使われる言葉ですが、法的な用語ではありません。DV防止法では「精神的暴力」として扱われます。つまり「モラハラだから保護命令は取れない」ということはなく、「精神的暴力として立証できれば保護命令の対象になる」とされています。

「精神的DVとして認められるモラハラ」の目安

言動・行為 精神的DVとして認められやすいか
「死ね」「消えろ」など生命を脅かす言葉の繰り返し 認められやすい(脅迫に近い)
「役立たず」「頭おかしい」など人格否定の言葉を継続的に 認められやすい(継続性があれば)
外出・友人関係の完全な制限 状況による・証拠があれば有力
無視・シカト(数日間一切口を聞かない) 単独では認められにくい・組み合わせで判断
「性格が合わない」「価値観が違う」という一般的なすれ違い 認められにくい

「自分のケースはモラハラかDVかわからない」という方こそ、弁護士に相談してください。同じ状況でも証拠の積み方と主張の組み立て方で結果が大きく変わります。

→ モラハラ離婚の証拠収集と手順はこちら:モラハラ離婚|証拠の集め方・離婚手順・慰謝料相場

よくある質問(FAQ)

Q1. 「精神的DV」で保護命令を取れると聞きましたが、具体的にどんな状態なら取れますか?

A. 継続的な暴言・脅迫・威圧的言動によって著しい精神的苦痛を受けており、今後も被害を受けるという恐怖が続いている状態が対象とされています。「継続性」と「恐怖の立証」が鍵です。録音・日記・診断書などの証拠を弁護士と一緒に整理することをお勧めします。

Q2. 夫から毎日LINEが30件来ます。電話等禁止命令の対象になりますか?

A. 内容・頻度・文脈によって判断されます。脅しや威圧的な内容を含む大量の連続送信は対象になる可能性があります。LINEのスクリーンショット(日時・内容が記録されたもの)を保存しておき、弁護士に判断を仰いでください。

Q3. 保護命令を申し立てたら、相手に知られますか?

A. 申立て後、裁判所から相手に審尋(意見を聞く手続き)が行われる場合がありますが、申立人の所在地等は保護されます。相手に住所を知られることなく手続きを進められる配慮がされています。詳細は弁護士または配偶者暴力相談支援センターに確認してください。

Q4. 保護命令が発令された後、相手が違反した場合はどうなりますか?

A. 2024年改正により、罰則が強化されました。違反した場合は2年以下の懲役または200万円以下の罰金(改正前は1年以下・100万円以下)が科される可能性があります。違反が発生した場合はすぐに警察に通報してください。

Q5. 子どもがいます。相手が子どもを通じて接触してくる場合の対応は?

A. 2024年改正で「子への電話等禁止命令」が新設されました。相手が子どもへの連絡を通じて申立人への接触を試みるケースに対応できます。申立て時に弁護士と相談して、子への禁止命令も合わせて申立てることを検討してください。

Q6. 保護命令は何か月有効ですか?期限後はどうなりますか?

A. 接近禁止命令は2024年改正で1年間(改正前は6か月)に延長されました。退去命令は2か月です。期限が切れた後に被害が継続する場合は、再度申立てを行うことができます。期限切れ前に状況を弁護士に相談することをお勧めします。

まとめ:2024年改正DV防止法で変わった3つのポイント

2024年4月の改正DV防止法で最も重要な変化は、「精神的DVも保護命令の対象になった」ことです。身体的な傷がなくても、継続的な精神的暴力・脅迫・威圧的言動で苦しんでいる方が保護を求めやすくなりました。

  • 精神的暴力も保護命令の対象に(身体的DVがなくても申立てできるようになった)
  • 電話・SNS禁止命令の対象がLINE等に拡大(2024年改正で追加)
  • 接近禁止期間が1年に延長・罰則が強化(改正前の2倍)

「証拠がない」と思っている方も、日記・録音・診断書の積み重ねで証拠は作れます。一人で悩まず、まず配偶者暴力相談支援センター(#8008)か弁護士に相談してください。

→ 2024年DV防止法改正の位置づけ(法改正全体):2026年4月 離婚法改正まとめ|共同親権・養育費・財産分与・保護命令の変更点
→ モラハラ離婚の詳細手順:モラハラ離婚|証拠の集め方・離婚手順・慰謝料相場
→ DVがある場合の親権問題:共同親権とDV:単独親権を守るための証拠と手続き
→ 調停離婚の手続き:調停離婚の流れと中断した場合の対応

免責事項・ご利用にあたって

本記事は、離婚に関する一般的な情報の提供を目的としており、 個別の法律相談・法的アドバイスを行うものではありません。

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【法改正対応について】
本記事は2026年5月現在の法律に基づいています。 共同親権制度(2026年4月施行)等の重要改正については、 最新の法律情報をご確認ください。

この記事を書いた人

furuta

【基本情報】 furuta(ふるた)|30代・女性・千葉県在住 離婚経験: 2022年 協議離婚(調停なし)|婚姻期間: 6年|子どもの有無: なし 主な離婚理由: 価値観の不一致(生活スタイル・将来設計のズレ) 【プロフィール】 夫とは6年間一緒にいたが、「子どもを持つかどうか」という根本的な価値観のズレが修復できなくなり、2022年に協議離婚を決めた。 離婚自体はスムーズに進んだが、問題は慰謝料だった。夫の浮気は証明できなかったため有責配偶者認定はなかったが、「精神的苦痛に対する慰謝料」を求めて交渉に臨んだ。当初100万円を目標にしていたが、相手に「証拠はあるのか」と言われた瞬間に言葉に詰まった。結局、話し合いで手にしたのは20万円。弁護士に相談していれば、少なくとも交渉の余地はあったと今でも思う。 「知らなかったこと」が損失に直結する。それがこのサイトを書き続ける理由だ。 【担当ジャンル】 協議離婚の進め方・段取り/慰謝料の請求・相場・交渉/モラハラ・価値観の不一致による離婚/離婚全般の入門記事 この著者が担当する理由: 協議離婚を経験したことで、「法的手続きを踏まずに交渉した場合の限界」を実体験として把握している。弁護士に頼らない選択肢の現実を書けるのは、実際に経験した者だけ。 【情報収集・執筆プロセス】 1. 法務省・裁判所・e-Govの公開資料で法的根拠を確認 2. 記事内の数値(慰謝料相場・算定基準)は判例タイムズ等の公開データを参照 3. 法改正があった項目は官報・法務省告示を必ず確認(2026年4月改正民法対応済み) 4. 記事公開後も法改正・判例変更があった場合は更新 「弁護士への相談が必要な案件」「ケースバイケースの要素が大きい内容」は必ず「弁護士への相談をおすすめします」と明記している。

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